●「アレクサンダーテクニークワークブック」 横江大樹著

2016年に出版予定

原典は最も信頼性の高い材料になるとはいえ、例えば、FM氏の著書第一作は100年ほど前に書かれていて古風な文体の問題がありまして、まるで、二葉亭四迷か森鴎外のようであれば現代人に読みやすいでしょうか。まだ全冊は完訳されていませんし、全てを参照すると1000ページをゆうに越えます。ワークをよく知っていて英語が理解できるよほどの本好きでなければ、誰しもとっつきにくいでしょう。そこで翻訳者が原典を引用しながらわかりやすい日本語で編集しなおし、実践的にワークを進められる手引きにまとめました。ツボです。その一方、現在我が国では教師を認定する法的規制がなく、誰でも「自分が教えます」とさえいえば開業できるアレクサンダーテクニーク界において、まるで百鬼夜行・妖怪ウォッチのようなドツボ概況をルポしました。原典と比較できるようにワークブック形式にしました。ビギナーのみならず、ベテラン諸君もさらに学びが深まることウケアイです。

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前書き 
だいたいの内容
三角・太極図・エニアグラムなどの採用

第一部
全体像
エニアグラムを用いたワークの必須用語一覧
心身統合体
クセを認める
抑制
学び方を学ぶ
知覚の訓練
エニアグラムの折り返し点
方向
気づき
プライマリーコントロール
使い方(使い方の影響が機能に現れる)

第二部
食事や環境
太極図とエニアグラムを用いた解説

第三部
サイエンスとアート、そしてドツボ

後書き
連絡先など

第一部 全体像から抜粋

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B:柔軟な手段とは、意識的調整手法です。
 FM氏は、世の中の手段を大きく二つに分けました。このワークで採用したいのは、その時最適な手段(means whereby)です。もう一方にあるよくみられるけれども避けたいやり方は、結果にあわてていく手段・エンドゲイニング(end-gaining)です。
 詳細はおいおい解説しますが、その時最適な手段とは何か、ここで非常に短く核心部を述べます。まず、欲しくない結果が起きているとしても、結果そのものには直接手を触れず、その原因を特定するように調べます。つまり、ある結果から遡って原因を探ります。原因の推定が出来れば、実験的に、その原因を無くす作業を組み立てます。もしかしてその推測が正しくかつ原因を無くせたならば、必然的に、欲しくない結果は無くなるだろうと、意識的調整します。逆から観ると、欲しい結果が起きるために、その根本要因にまで遡ってそこで必要なことをする、という側面もあります。
 原因がわかり、ワークで解決した、そうしたら初めて、もっと奧の原因が見えてきた、というのはよくある話で、意訳した「その時最適な手段」というのは、ワークの進行に連れて徐々にどこまでも内容が移りかわる可能性を示しています。
 ちなみに、創始者FM氏の一冊目・人類の最高遺産で、根本原因があるとされている項目を示しましょう。こころやからだはもとより、衣食住環境、子どもから大人までの社会環境や教育の歴史、国家の成立基盤、動物から人類への進化過程、未開人と文明人の違い、生理学・医学、まだまだあります。

 近代的な例をひとつ挙げましょう。
 エンドゲイニングではこうなります。
 ここ数年頭痛がひどい。テレビで宣伝している鎮痛剤を飲んだ。確かに痛みは減った。初めは一週間に一回程度の服用だったが、最近では毎日飲まないといられない。そのうち胃もしんどくなってきて、胃薬も必要になった。精神的にもやる気がしないし、自分じゃないみたいだ。それで医者にかかった。初めは内科、その医師に勧められて心療内科、肩こりなどもあって整形外科も、脳波やCTや生活習慣病など次々と検査を続けているが正常とも異常ともはっきりせず、症状は良くならない。仕事もプライベートもはかどらず、医者に処方された複数の薬でなんとかしのいでいる。

 その時最適な手段ではこうなります。
 そうこうして、人伝てでATJ:アレクサンダーテクニークジャパンというところに行ってみた。立派な名前のわりには実に小規模、というか零細で「大丈夫か」とも思ったが、せっかく来たのだしおそるおそる話してみたら、ゆっくりと個人的状況も聞いてくれた。初回レッスンはなんだかよくわからなかったけれども、確かにラクになった。それで何度か通ううちに、複合した原因が明らかになってきた。ケイタイ電話やPCやI-Podなどほぼ一日中利用していたし、よくヘッドホンを使っていたので、その電磁波障害がかなり強力とわかった。オール電化の調理器具や床暖房の電気カーペットも影響するらしい。微量な電気が漏れている環境にいると、そのせいで神経が影響を受けて筋肉は縮む、と説明された。「神経信号は電気信号ですからね」と。グッズなども使って環境改善し、食習慣も相談にのってもらった。丁寧な説明とともに、「クビがラクに~」という古典的な手技(ハンズオン)も受けた。全部で「使い方」が改善された。何年も悩んでいた症状、そういえば花粉症もあったのだが、3ヶ月もワークしたらどこかへ行ってしまったような気がする。薬はいらなくなった。

 ある手段をとるにあたり、結果から追いかけて原因を類推し、因果関係を見直して、理知的に意識的に把握する必要があり、そうして、有効な手段をとるべきだと申しております。薬や医者が絶対ダメだとは言っていません。ひどい怪我をして、骨が折れ、皮膚が破れ、血がだらだら流れているところで、我等教師のところに来られてもなすすべはありません。その際は、有能な外科医による縫合などの手術と同時に各種の薬剤使用が、「その時最適な手段」でしょう。

 本ワークは、病気や不具合に対応するだけではなく、トップアスリートがさらなる記録のために、すでに世界のヒノキ舞台で活躍している芸術家がより素晴らしいパフォーマンスのために、他にも様々に利用されています。
(メモ蘭)
ご自身での要約・疑問点など。

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エニアグラムを用いたワークの必須用語一覧

FM氏の著書にワークがどう進むかに関して記述されています。そのなかで、主に「自己の使い方」第一章・進化するテクニークから、本ワークの特徴を著す用語を取り上げました。よそのワークと比較するとよろしいでしょう。七つの専門用語と二つの一般用語と合わせて九つ、それを現代日本語で端的にまとめ、上の図にしました。

文章にして、FM氏の語り口のようにすると:
0.心身統合体
身体的にだけ、あるいは、心理的にだけ良くしようとしたが、何をやっても私はダメだった。行き詰まったあげくに、ひとつの重大な事実に辿り着いた。人間はひとつの有機体であり、たまたまある側面がこころ的だったりからだ的だったりする、言い換えると、こころもからだも同じひとつの人間であって現れ方や受け取り方が違うにすぎない。それなのに、一般人は別物と思い違いしているし、私も初めはそうだったのだと。思い直してから、観察したら自分も含め老若男女全員に当てはまった。だから人間有機体を心身統合体(psycho-physical unity)と呼ぶことにしよう。
1.クセを認める
そこで、身体に表れていたりその奧にある考え方だったり、なんらかの困ったクセ(習慣)を自分で認める(recognition of habit)ことになる。あるいは、生徒は教師に導かれて気が付くようにしてもらうこともあるだろう。無意識の部分を意識化すること、もしくは、直情的調整から意識的調整に移りかわろうと決意すること、と表現したらどうだろうか。
2.抑制
いずれにせよ自分でやっている動きなら、自分でやめられるはずだ。抑制(inhibition)とは、不要な動きを減らすことだ。裏を返せば当然、必要な動きが起きてくることも含まれる。だとしても、するのをしないこと(un-doing, non-doing)とはどういうことか、すること(doing)との差を知る必要がある。
3.学び方を学ぶ
学びとは一般用語だ。本学習にあたりたいていは、学び方自体を根底から学び直さないと行けない。我等の受けてきた教育自体が巨大な習慣であるからだ。そうなるとここで、新しい教育と再教育の体系が要るだろう。
4.知覚の訓練
というのも、感じを使って正しいか間違っているか決めようとしても、必ず間違ったことをしでかしてしまうとわかったからだ。これを誤った感覚的評価と呼ぶ。以前に正しいと感じて動いていたのに実際の結果がダメだったのであれば、逆に、上手く動けたとしても正しく感じるはずがない。そこで、知覚の訓練をする。
5.方向(複数の方向)
方向はひとつだったり複数だったりする(direction, directions)。(ひとまず感じは脇に置いて)、三次元的に、上下・左右・前後で構築してみて、今までの誤った方向と、その逆方向にある自分の進むべき正しい方向と、どちらもしっかり理知的に理解する。そのうえで、望ましい方向を投影する(がしかし、まだやらない)。
6.気づく
気づくとは一般用語だ。練習によってだんだん気づく能力が高まってくると。困ったクセが実際に出てくるよりずっと前に、そのクセの前兆みたいなところでやりそうになっている自分に「気づく」ようになるだろうし、そのくらいデリケートな気づきを育むことになるだろう。
7.プライマリーコントロール
邪魔せずに、プライマリーコントロールに任せたら上手く行く。プライマリーコントロール(Primary Control)とは、第一に重要な調整で、人間に生まれながらにして備わっている働きだ。よその大学でコギル博士やマグナム博士の見つけた中枢調整と呼ばれる働きがある。脊椎動物に備わっていて、アタマが先に動いてカラダがついて行く、そのつなぎのクビがラクなら上手く行く、そんな働きだ。一方で、クビが固いと全身が上手く働かない、つまり邪魔されて、プライマリーコントロールがうまく発揮されない状態になる。
8.使い方
使い方(use)。使い方の影響が機能に現れる(Use affects functioning.)。変な使い方をすると機能不全になる。逆に、良い使い方なら上手く機能する。私の場合では、使い方が改善されたので、声を出す機能が良くなった。つまり、変な使い方のままで発声をうまくやろうと必死でもがいていたがダメとわかり、最後にやっと、上手な使い方がわかって、そうした影響で機能が改善した。さらに言い換えると、結果にあわてていこうとする手段から、その時最適な手段に変更できた。良かった!
9.心身統合体
一回りした心身統合体をもとに。さらなる改善へ向けて進もうではないか。